(2014年4月7日更新)
快適健康住宅づくりのコツ
開口部で太陽熱をコントロールして夏も冬も快適に
監修:西方 里見(西方設計代表・一級建築士)
断熱材選びや断熱工法と合わせて検討したい開口部や住宅設備について考える連載記事です。
家族の健康と住まいを良好に保つために大切なポイントをご紹介していきます。
日射条件に合わせた開口部プランが肝心
住まいの断熱を進めるうえで窓は弱点になりやすく、熱損失を抑えにくい部分であるのが事実です。非常に高性能な窓も多く製品化されていますが、それでもグラスウールなどの断熱材を入れた壁の断熱性能には及びません。
しかし一方で、日射熱を取り入れられるのは開口部ならではの特徴です。最近の省エネ住宅では、室内の温熱環境を屋外から完全に切り離して機械的に制御するというより、太陽の日射熱をいかにコントロールし上手に利用するかという考え方が重視されています。最先端の省エネ住宅であるパッシブハウスやゼロエネルギー住宅を実現するためにも、日射熱の活用は欠かせません。
そのため、窓の仕様を考えるには「その地域の気候と日射条件がどうか」といった視点が極めて重要になります。温暖な地域ほど暖房負荷は小さくなりますが、一般に気温が同程度でも、冬場に得られる日射量が少なければ暖房負荷は大きくなり、日射量が多ければ暖房負荷は小さくなる傾向にあります。
近年断熱窓の主流となりつつあるLow-Eペアガラスでも、日射量との関係から断熱タイプと遮熱タイプが使い分けられています。日射をよく通し、放射熱を反射させて室内に閉じ込める断熱タイプは寒冷地で多く用いられ、日射量が多い太平洋側などでは夏の強い日差しを防ぐ遮熱タイプが選ばれています。
高断熱高気密住宅に適した窓のあり方
「Q1住宅」と呼ばれる極めて断熱性能が高い住まいでは、日射取得の効果が格段に高くなります。温暖地では開口部が大きいほど冬の外気温と無暖房状態での室温の差(自然温度差)が広がりますが、特にQ値(※1)1.3の住宅の例を見ると、南面を中心に十分な窓面積を確保することで、真冬もほとんど無暖房で快適な室温が得られることが分かります。
この際に重要となる窓の性能は、U値(※2)2.33以上を確保するようにします。温暖地では樹脂複合サッシとLow-Eペアガラスの組み合わせが目安です。さらに、オーバーヒートを避けるためLow-Eペアガラスは遮熱タイプが適しています。遮熱ガラスは日射取得を多少妨げてしまいますが、窓面積の大きさがそれを補ってくれます。南面に開口部が取りにくいときは太陽熱集熱壁(※3)を設けて、窓と壁を一体化させた日射取得をするなども考えられます。一方寒冷地では、断熱タイプのLow-Eペアガラスと樹脂複合サッシの組み合わせ が目安となります。
一年を通して最小のエネルギーで快適に暮らすためには、夏にいかに熱をシャットアウトするかも考えなければなりません。ポイントとなるのが、厳しい西日を受ける西面の日射遮蔽です。通風などを目的に西面に大きな開口部を置くのは省エネと快適性の観点からはNGです。遮熱ガラスを使った最小限の窓のみ設けて、外付けブラインドなどを組み合わせて対策します。
「後付け」の開口部断熱で上手な省エネを
開口部では、住まいの完成後に暖かさや涼しさを確保するための「後付け」の工夫もあります。夏場に使うすだれやよしずはその代表格で、古くから日本に伝わる知恵といえます。日射遮蔽で肝心なのは、窓の内側ではなく外側で日射を遮り、熱を室内に入れないことです。
遮蔽力と操作性を考えると、夏の対策では外付けブラインドが優れています。電動タイプを選べば窓を閉めたままブラインドを開閉でき、冷房時でも室内の冷気を逃がすことがありません。個々のルーバー(スラット=羽根)の向きを調整できるものであれば、冬場は取り入れた光を天井に反射させて照明代わりに利用することもできます。
冬は、夏とは逆に窓の外側ではなく内側で熱が逃げていくのを遮る工夫をします。サッシを二重にして断熱性を高める内窓は、外部に面した窓サッシのリフォームが禁止されているマンションでも有効です。より手軽なものでは、カーテンを折り返すことで脇から逃げる熱を防いだり、窓に貼る、または窓の前に立てるタイプの断熱シートや断熱パネルの活用でも室内の快適性は高まります。建築的手法と組み合わせながら、上手に省エネを図りましょう。