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(2014年5月1日更新)

快適健康住宅づくりのコツ
計画的に住まいに新鮮な空気を満たす

監修:西方 里見(西方設計代表・一級建築士)

断熱材選びや断熱工法と合わせて検討したい開口部や住宅設備について考える連載記事です。
家族の健康と住まいを良好に保つために大切なポイントをご紹介していきます。

換気の効率・効果をより高めるには?

機械換気は、換気を各空間でそれぞれ行うか、住まい全体で考えるかという観点から「個別換気」と「計画換気」に分けることができます。個別換気では浴室やトイレ、キッチン、居間などに個別に換気扇をつけるのに対し、計画換気は住宅の全体をとらえて換気経路や換気量を明確にし、制御することで、計画的・効率的な換気を実現します。

換気システムの種類

建築基準法では、そのどちらを選ぶかについての規定はありません。そのため、24時間換気システムの義務化基準をクリアするだけが目的であれば、個別換気でも十分に対応できます。個別換気は、カタログに記された換気量をもとに台数や設置場所を決めればよいので、手軽でコストも抑えられます。

しかし、住まいの隅々まで新鮮な空気を行き渡らせ、汚れた空気を適切に排出し、健康性を高めようとすれば計画換気が必須となってきます。一般的には、居間などの居室から外部の新鮮な空気を取り入れ、トイレ・洗面所・浴室・キッチンなどから汚れた空気を排出する換気計画を立てます。

汚れた空気を集めて排出する「セントラル方式」

計画換気では、多くの場合「セントラル方式」と呼ばれる方法がとられます。これは、居室などに換気グリルを設置し、ダクト配管によって空気をセントラルファンに集め、室外に排出するものです。換気ユニット本体が天井裏に隠れるため、インテリアもすっきりとまとまります。

セントラル方式は、給気・排気ともに機械で行う第1種換気と、自然吸気して機械で排気する第3種換気のどちらでも可能です。第1種換気の場合、装備することが多いのが「熱交換システム」です。このシステムは、換気で排出する汚れた空気と一緒に捨てていた熱や冷気を給気で回収して室内に戻すもので、冷暖房エネルギーを軽減できるメリットがあります。(関連ページはこちら

一方で、排出された汚染物質が給気に混じるリスクがあること、メンテナンスなしには給気ダクト内の空気汚染が進むことなどが懸念点として挙げられます。熱交換器やダクト内の定期的な清掃は個人では難しく、機器の選択や管理をどうするかを導入前にきちんと検討することが大切です。

熱交換器のしくみ

住宅への導入でより現実的なのが、給気口側にダクトがない第3種換気の「排気型セントラル換気」です。シンプルな仕組みのためイニシャル・ランニングコストともに安価なのが特長です。ただし、給気は自然に行うので冷たい外気が入ってきて不快に感じることがあり、寒冷地には向きません。また、効果的な換気のためには高い気密性能や仕切り壁の少ない開放的な間取りなどが条件となり、かつ延べ床面積40坪程度までが限界です。

排気型セントラル換気

「パッシブ換気システム」で機械に頼らず計画換気

自然換気でありながら、ある程度計画的に換気量を設計できる「パッシブ換気システム」もあります。これは、室内外の温度差から起きる浮力を換気に利用する比較的新しい換気方法で、換気不足になりやすい冬の対策として主に寒冷地で用いられます。計画的に空気の流れをつくるために、住宅の非常に高い気密性能が前提となります。

基本的には、基礎断熱を施した床下から自然給気し、床下に設置したエアコンなどで温めた空気を室内に自然循環させます。排気は、吹き抜けを設けた上で建物の最上部近くに設置した窓から行います。暖かい煙が上昇する煙突効果の応用と考えればイメージしやすいでしょう。

パッシブ換気

ランニングコストがかからず、維持管理も楽というのがパッシブ換気の大きなメリットです。また、機械換気では空気の流れが住まいの横方向に走るのに対して、パッシブ換気では縦方向に流れるため、家の中で空気の淀みが起きにくくなります。

デメリットとしては、換気量にばらつきがあり、建築的な工夫が必要なことから、技術的に対応できる工務店や設計事務所がまだ少ないことなどが挙げられます。住宅では原則機械換気の導入が義務付けられているため、実際にはパッシブ換気と機械換気のハイブリッド換気となることも留意点といえるでしょう。

西方 里見氏

西方設計代表・一級建築士

西方 里見(にしかた さとみ)

地元の秋田県能代市で設計事務所を主催しながら、理想の高断熱高気密住宅を追い求めるオーソリティーの一人。『「外断熱」が危ない』『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』(いずれもエクスナレッジ刊)など、一般の人に向けた啓蒙書も多数刊行している。

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