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(2014年5月14日更新)

快適健康住宅づくりのコツ
エコで快適な暮らしの強い味方・太陽熱給湯器

監修:西方 里見(西方設計代表・一級建築士)

断熱材選びや断熱工法と合わせて検討したい開口部や住宅設備について考える連載記事です。
家族の健康と住まいを良好に保つために大切なポイントをご紹介していきます。

熱を熱のまま使うことで高い効率を実現

太陽エネルギーは、太陽光発電のほか太陽熱利用という形で給湯に活かすことができます。日本では太陽光発電にばかり注目が集まりがちですが、実際には、温暖地であれば住宅で使われるエネルギーのうち暖房より給湯の消費量の方が大きくなっています。給湯は使用する季節が限定された暖房とは違い、一年を通して使用することから、全国平均では世帯当たりのエネルギー消費の約28%を占めています。

用途別エネルギー消費

太陽光発電では、日照時間帯と利用時間帯に差があると蓄電池などの設備が必要になるのに対し、太陽熱給湯器では半日程度のずれはほとんど支障がありません。熱を熱のまま使うことで、電気でお湯を沸かすよりはるかに高い効率で給湯できます。

東日本大震災以前は、電力需要が少なく安価な深夜電力を利用してお風呂のお湯を沸かすことなどが節約になるとされていましたが、それはあくまで原子力発電による電力供給を前提にしたものです。原発が止まれば深夜でも電力は余りません。深夜電力でお湯を沸かすことは今後見直しを迫られているといえるでしょう。

太陽熱給湯器のコストメリットとしくみ

太陽熱で照明などの家電を動かすことはできませんが、給湯を賄うことで住まい全体での電力消費量は相当に少なくなり、月々の電気代を抑えられます。屋根の集熱パネル※も太陽光発電パネルに比べればはるかに安価。残念ながら一般住宅に対する国からの補助金はないものの、助成制度のある自治体もあり、社団法人ソーラーシステム振興協会でその有無を確認することができます。

※集熱パネル:太陽熱を集めるため、住宅の南面の屋根など日当たりのよい場所に設置するパネル。集熱器とも呼ばれる。

太陽熱給湯器では、太陽さえ照っていれば給湯のためのエネルギーが不要になります。一回の入浴で約200リットルのお湯を使う家庭の例では、ガスで給湯すれば年間平均で1回当たり200円程度かかるのに対し、太陽熱を利用すれば基本的にはこれがゼロに。年間ではかなり大きな節約効果が見込めます。

太陽熱給湯器の仕組みはシンプルで、屋根に取り付ける集熱パネルと貯湯タンクから構成されています。両者が一体化されているのが「自然循環式」、分離されているのが「強制循環式」です。最近主流となっているのは強制循環式で、集熱パネルは屋根に置かれ、貯湯タンクは地面に設置されます。これにより屋根への負担が小さくなり、漏水リスクもかなり減ってメンテナンスが楽になりました。ただし、強制循環式では循環にポンプを回すため、わずかながら電気が必要となります。

太陽熱給湯器の仕組み

ガス給湯器との連携でより便利に

関東地域を例に見ると、集熱パネルは真夏にはほぼ水平、真冬では60度程度に置くことで効率的に太陽熱を集められます。とはいえ季節ごとに角度を変えることはできないため、年間を通して考えれば日当たりのよい南向きに30度程度の角度で設置するのが理想的です

太陽光発電は気温が上昇すると効率が下がる傾向がありますが、太陽熱給湯器はその逆といえます。真夏に本領を発揮し、地域の日照時間や気温によってばらつきはあるものの、温暖地なら冬の一時期を除いて常に40℃以上のお湯を利用できます。

年間を通して安定的にお湯を確保できるよう、最近ではガス給湯器と連携させたものが増えています。その場合、湯温が低いと自動的に加熱されるので、使用感としては通常のガスによる給湯と変わりません。入浴時の追い炊きも可能です。ガス給湯器のほか、エコキュートや温水式床暖房などと組み合わせた多機能型もあります。ただし、設備コストの回収期間は安価でシンプルなものの方が短くなります。

給湯器のタイプと価格

なお、屋根の上の雨風を受ける環境に集熱パネルを置くため、太陽熱給湯器もやはりメンテナンスが欠かせません。メーカーでは年1回程度の定期メンテナンスを推奨していますが、できれば台風などの大きな自然災害を受けた後にも点検を依頼した方がよいでしょう。

西方 里見氏

西方設計代表・一級建築士

西方 里見(にしかた さとみ)

地元の秋田県能代市で設計事務所を主催しながら、理想の高断熱高気密住宅を追い求めるオーソリティーの一人。『「外断熱」が危ない』『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』(いずれもエクスナレッジ刊)など、一般の人に向けた啓蒙書も多数刊行している。

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