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(2014年5月21日更新)

快適健康住宅づくりのコツ
冷暖房の選び方・使い方

監修:西方 里見(西方設計代表・一級建築士)

断熱材選びや断熱工法と合わせて検討したい開口部や住宅設備について考える連載記事です。
家族の健康と住まいを良好に保つために大切なポイントをご紹介していきます。

夏の暑さより冬の寒さ対策を重視した計画を

まず認識しておくべきなのは、日本では、沖縄を除くほぼすべての地域で冷房より暖房に使用するエネルギーが大きいということです。冷房・暖房ともに必要な期間は限られていますが、夏の冷房期間の方が明らかに短いのです。また、真夏の外気が35℃の日に冷房で室温を25℃にしても、その温度差は10℃程度。それに比べて真冬に外気が5℃のとき室温20℃を確保しようとしたら、15℃加熱しなければなりません。こうした理由から、関東では夏と冬のエネルギー消費量の比率は1:10程度となっています。

家庭での消費エネルギー内訳

夏は、本当に暑ければエアコンをつけるのが一番です。窓を開けて風を通したり、扇風機を回しても湿度が下がるわけではなく、十分な快適さは得られません。熱中症の4割が住宅内で発生していることを考えても、無理せずにエアコンを使うべきでしょう。

夏の暑さ対策が「エアコンの使用」でほぼ解決するのに対して、冬の暖房方法は選択肢が増え、もう少し複雑になってきます。家全体での温度差や一日の温度差を抑えながら暖かさを確保できるよう、機器選びはもちろん設置場所や使用方法などをその家に合わせて考えなければなりません。

使用電力の数倍の熱をつくるヒートポンプ

さまざまな暖房器具がある中でも、もっとも一般的なのはやはりエアコンです。エアコンは冷房方法として適しているだけでなく、温暖地であれば他の暖房方法と比べても優れています。エネルギー効率が非常に高い、空気が汚れないなどが長所といえます。

エアコンの高いエネルギー効率は、消費した電気の何倍もの冷気や熱をつくれることに基づきます。例えば、本体のラベルに「暖房時消費電力430W/暖房能力2.5kW」とあれば、430Wの電力で、約6倍相当となる2,500Wの熱をつくれることを示しています。

これはエアコンの心臓部であるヒートポンプの働きによるものです。「熱のポンプ」という名前の通り、屋外から熱を汲み上げて室内に放出しています。自分で熱をつくりだすのではなく、熱を外気から取り入れることで、使用電力以上の熱を提供しているのです。外気温が低い日には十分な熱が取れずパワーダウンしますが、温暖地では問題になるほどではありません。

ヒートポンプの概要

エアコンのデメリットは、住宅の断熱・気密性能が低ければ、同じ室内でも大きな温度ムラが起きる点です。一般にエアコンは部屋の上部に取り付けられることが多いため、「足元がいつまで経っても暖まらない」などが代表的な悩みとなっています。

上手なエアコンの選び方・使い方

エアコン選びではエネルギー効率が非常に重要になります。省エネ性能を示すAPF(Annual Performance Factor:通年エネルギー消費効率)がカタログなどに表示されているので、できる限りその値が大きいものを選ぶようにします。APFは、値が大きいほど1の電気で処理できる熱量が大きくなることを示しています。

なお、エアコンを使う際に節電を理由に「弱風」「微風」を選ぶ人がいますが、これは意味がありません。風量を稼ぐために回すファンの電力量は、熱や冷気をつくるための電力量よりはるかに小さいもの。エアコンをつけてから部屋が快適な温度になるまでは、温風・冷風を一気に送り出す必要があり、風量を控えめにすると、適温に達するまでにより多くの電気を消費しています。「風量自動」にしておくことが最も省エネになります。

また、見栄えをよくしようとエアコンの室外機を囲うのもNGです。夏の排熱・冬の集熱に必要な空気の流れが確保できず、エネルギー効率が大幅に低下してしまいます。

エアコン室外機の設置

一方、夏であればエアコンと扇風機の併用は有効です。低断熱・低気密な住まいでは、扇風機を回すことでエアコンによる温度ムラを和らげて冷気を行き渡らせます。高断熱高気密住宅では温度ムラは起きにくいものの、暑さ・寒さの感じ方に個人差がある場合は、強い冷気を求める人が自分に向けて扇風機を使えば、他の人が冷えすぎて不快な思いをせずにすみます。

西方 里見氏

西方設計代表・一級建築士

西方 里見(にしかた さとみ)

地元の秋田県能代市で設計事務所を主催しながら、理想の高断熱高気密住宅を追い求めるオーソリティーの一人。『「外断熱」が危ない』『最高の断熱・エコ住宅をつくる方法』(いずれもエクスナレッジ刊)など、一般の人に向けた啓蒙書も多数刊行している。

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