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(2014年10月9日更新)

菅原大輔さんが語る「機能とデザインのバランス」

省エネ性や断熱性といった「機能」と、暮らす喜びを感じられるような「デザイン」はいずれも家づくりの核であり、
マイホームを考える一人ひとりが両者の最適なバランスを探し求めることが重要です。
本コーナーでは、機能とデザインを合わせたトータルな視点から住まいを提案する建築家、菅原大輔氏を迎え、お話を伺いました。

1. 機能と空間デザインのバランスから住宅を考える

住まいの省エネへの考え方はつくり手ごとに温度差が大きく、徹底して追求するか、重視しないか、両極端に振れがちなのが日本の特徴だと感じています。 前者の場合、エネルギー効率を高めることだけに偏り、住まいとしての美しさが犠牲にされるケースが少なくありません。開口部を最小限に抑えて厚い壁で囲い、デザインによって得られる視覚的な快適性を考慮しない建物にすれば抜群の断熱性能が得られます。ただ、それでは住環境として大いに問題があり、ほとんどの人は受け入れられないでしょう。

後者はその逆で、デザイン面を何にも増して優先し、断熱性・気密性などの機能面は特にこだわらないとする姿勢です。しかし、視覚的な美しさばかりを追い求め、「冬は極寒、夏は灼熱」という家もまた望ましいとはいえません。
住宅の設計に携わるとき私が常に目指しているのは、省エネ意識が高い人でも機能性に満足でき、空間デザインを重視する人でも住みたいと思えるような、いわば「いいところどり」の住まいです。断熱・気密性などの機能的要素と、眺望を得るための大窓といったデザイン的要素は、一見相反しているように思われますが、両立は不可能ではありません。

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機能性とデザイン性のバランスを追求した住宅の一つとして、2013年に東京近郊に建てた私自身の自宅が挙げられます。訪れるお客様には「開口部が広くて非常にオープンな設計」と驚かれることがあります。しかし、実際に過ごしてみると見た目よりもはるかに断熱性能が高いことが分かり、「開放的なデザイン=夏は暑く、冬は寒い」という一般的な図式は成り立ちません。

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例えば2階のリビングダイニングでは、北面・東面が掃き出し窓、西面が階段室につながる引き戸 となっています。階段室もガラス張りで視界の抜けがあることから、三面がオープンという印象を受けるのですが、この階段室は屋外環境とリビングダイニングの間で空気のクッションとなり、二重の断熱層ができるのです。壁と天井には高性能なグラスウール断熱材を充填し、窓にはペアガラスと樹脂サッシを採用して、その上で階段室という断熱層を持つことから、開放的に見えながらも実はしっかりと閉じた断熱空間となっています。

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さらに、クローズな空間で高断熱・高気密を施した各寝室は冷房を使わなくても窓を閉めている方が涼しく感じます。日が沈んでから窓を開けて夜風を通すと、その冷気が翌朝まで残っているのです。真冬も耐えらないような寒さを感じることは当然ありませんし、結露もしません。
私はフランスでも長く建築の仕事に携わってきましたが、ヨーロッパでは建物の省エネ性能への法規制が非常に厳しいにも関わらず、デザイン的にも素晴らしい住宅が多かったことを思い出します。これは、そもそも高断熱・高気密が家づくりの大前提となっており、そこを起点に開口部などのあり方を考えるため、省エネ性とデザイン性を両立するノウハウが蓄積されてきたからといえるでしょう。
機能性を高めるためにはデザイン性を諦めなければならないということは決してなく、その逆もしかりです。両者の最適なバランスの中で、日本らしい「住まいの心地よさ」を追求していきたいというのが、建築家として私がいつも抱える想いです。

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建築家・アートディレクター

菅原 大輔(すがわら だいすけ)

昭和52年東京生まれ。平成15年に早稲田大学大学院理工学研究科修士課程を修了し、一級建築士資格を取得。日本・フランスの建築事務所での勤務を経て、設計事務所SUGAWARADAISUKEを設立。「社会資源としてのデザイン」を探求し、建築を背景にした総合的なデザインとアートディレクションを行う。「2014年日本建築学会作品選集新人賞」受賞、その他国内外で受賞多数。平成25年より、日本大学理工学部非常勤講師。

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