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菅原大輔さんが語る「機能とデザインのバランス」

省エネ性や断熱性といった「機能」と、暮らす喜びを感じられるような「デザイン」はいずれも家づくりの核であり、
マイホームを考える一人ひとりが両者の最適なバランスを探し求めることが重要です。
本コーナーでは、機能とデザインを合わせたトータルな視点から住まいを提案する建築家、菅原大輔氏を迎え、お話を伺いました。

4. 今後求められる住宅と都市のかたち

東京・調布に建てた私自身の自宅「時の流れる家」は、壁だけでなく上下階の間やドアにも高性能グラスウールを入れているため、断熱性だけでなく遮音性も極めて高く保たれています。閉めてしまえば各部屋で室外の音はほとんど聞こえません。

また、温熱環境も個室ごとに完全に切り分けることができます。各部屋が高断熱であることから、同居する母は「夏は夜に窓を開けて風を通せば、その冷気が翌朝まで残っていて閉め切っている方が涼しい。冬は冬で、何もしなくても自然と暖かい」と言い、自室ではほとんど冷暖房を使用しません。それぞれがコンパクトな部屋なので、必要があるときは空調を少し使えばごく簡単に温度をコントロールできます。24時間換気システムも部屋ごとに独立させています。

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このような各個室が独立した構成は、将来的にシェアハウスや三世帯住宅としての使い方を想定したものです。ライフスタイルの変化に対応可能で、家族以外の第三者が住んでもプライバシーをしっかり守れることを家づくりの前提に置きました。ただし完全に切り離すのではなく、共用空間を持つことで居住者同士の交流を生み、互いが適度な距離感で暮らせることをコンセプトとしています。

暮らしの変化のスピードが速い都市部では、流動性に対応できる住まいが今後ますます求められてくるでしょう。シェアハウスという形態は最近少しずつ増えてきていますが、わが家のように所有者が住み続けながら空いている部屋を有効活用するスタイルは、住宅への愛着が高いので維持・管理の質が落ちにくいというメリットがあります。こうした住まいを「柔軟性の高い社会ストック」として次世代に多く残していければと思います。

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将来の建物のあり方を考える上で、もう一つ私が重視しているのが「自然といかに共存していくか」という視点です。温暖化や大気汚染などの問題が深刻化する中で、建築においてもいかに環境負荷を抑えるかを考えることは重要なテーマです。

現在携わるプロジェクトの一つに、建物内部だけでなく周辺環境にも心地よさを提供できるエコフレンドリーなビル構想があります。断熱性を高めて空調利用を可能な限り抑えるのはもちろん、植栽の利用や壁の素材を工夫することで、例えば「夏にその建物の近くを通ると何となく涼しさを感じる」といった効果を狙います。

従来のビルでは、内部の温熱環境を空調でしっかりと管理し、外部に不要な空気や熱を排出することで快適性を確保してきました。これは、たくさんの電力を使う場所と、その生産を負担する場所が異なる現代の日本の姿にも通じるものがあります。環境負荷という代償を外へ外へと押しやってきたこれまでの「都市の快適性」の既成概念を覆していこう、というのが私たちの挑戦です。

こうした考え方が単体のビルを超えて街全体に広がると、都市そのもののあり方が変わってくるでしょう。世界人口の半分が都市に住むといわれる現在、都市が変わればそれはそのまま人間の生活環境が変わることにつながります。

日本最大の都市・東京は、2020年のオリンピック開催を控えて海外からの注目が高まっており、外国人観光客も今後ますますの増加が見込まれています。日本はもともと「自然と共に生きる」という思想を持つ国です。建築物においても、断熱・気密などの最新技術を伝統的な思想と組み合わせることで「自然環境との調和・共存」を実現し、そのコンセプトを海外に広く発信していければ素晴らしいと思います。

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建築家・アートディレクター

菅原 大輔(すがわら だいすけ)

昭和52年東京生まれ。平成15年に早稲田大学大学院理工学研究科修士課程を修了し、一級建築士資格を取得。日本・フランスの建築事務所での勤務を経て、設計事務所SUGAWARADAISUKEを設立。「社会資源としてのデザイン」を探求し、建築を背景にした総合的なデザインとアートディレクションを行う。「2014年日本建築学会作品選集新人賞」受賞、その他国内外で受賞多数。平成25年より、日本大学理工学部非常勤講師。

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