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将来まで有効に使える子供部屋をつくるためには?

監修:新井 崇文(新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士)

家づくりのきっかけには様々なものがあります。中には「子供ができたので、家を建てたい」という方もいます。子供部屋のあり方を考えることは、家づくりにおいても大切な要素のひとつです。本コラムでは「実家を訪ねて子供部屋で思うこと」のエピソードから始まり、「子供部屋は時期により使い方が変わる」「子供部屋の大きさ」「子供部屋への動線」についてご紹介致します。

実家を訪ねて子供部屋で思うこと

自分の実家に時々遊びに行ったときに、いつも思うことがあります。実家は1階にリビング・ダイニングがあり、2階に寝室・子供部屋などの個室があります。私が以前過ごしていた子供部屋は南向きの明るく心地よい部屋なのですが、現在は増え続けるモノたちを収める倉庫と化してしまっており、訪れるたび「これはもったいないなあ・・・」と思うのです。例えば隣接する部屋と容易につなげて使えるようなつくりにしてあれば、もっと魅力的な使い方もできたのに・・とも思います。

 

子供部屋は時期により使い方が変わる

子供部屋は、時期により使い方が変わっていく性質があります。

まず子供が赤ん坊から幼児までの時期、子供は常に親の目の届くところにいたがりますので、独立した子供部屋は要りません。必要なのは子供が本を読んだり遊んだりするスペースと、そこで使うモノを収納する場所ですが、これらは親が多くの時間を過ごすリビング・ダイニング・キッチンなどと一体の空間にコーナーをしつらえると良いでしょう。

次に子供が小学生の時期ですが、これは子供の性格や家庭の方針により差が出るところです。個室でも寂しがらない子供であれば個室を用意してもよいと思いますが、親と同じ空間にいたがる子供もいます。個室を設ける場合も、兄弟バラバラよりは、兄弟でひとつながりの部屋にすることで、スペースを広く使って一緒に遊ぶことができ、おもちゃも共用することができます。

やがて子供が中学生・高校生となると、思春期のデリケートな時期でもあり、個室など自分のプライベートな領域が必要となります。ただこの時期も家族との適度なコミュニケーションは大切ですので、常に個室に籠ってしまわないような工夫をしたいところです。例えばベッドと収納と最小限の居場所は個室の中に確保しながらも、勉強は親兄弟と共用のスタディコーナーで行うような設えとする方法もあります。

そして子供が大学生以降となれば、いずれ家を出て独立していきます。この時、子供部屋の使いみちが問われます。ゲストルームとしてきれいに設えておき、子供が帰省した時に泊まれるようにしておくのも良いと思いますが、夫婦が日常的に利用できればなお有効です。例えば趣味室としてもよいでしょう。その時、もし子供部屋が2室の場合は境の壁を撤去して広い1室にできる、とか、リビングと吹抜けで繋がっているなど、何らかの工夫がされているとより魅力的に空間を利用できます。

ここで子供部屋の工夫の実例をご紹介しましょう。

 

●実例1:小学生のための子供部屋
まずご紹介するのは我が家の事例です。夫婦の寝室と子供部屋を一体空間とし、将来必要に応じて家具や間仕切りで仕切る考えとしています。

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(荏田町の家)

子供は現在小学校2年生。まだ親と一緒にいたがるため、親子3人「川の字」で寝ています。普段子供が本を読んだり、勉強したり、遊んだりするのは専ら1階のリビング・ダイニングです。2階は寝室として広々と使ったり、子供の習っている空手の練習スペースとして使ったりしています。将来、子供部屋として区切る時期があったとしても、いずれ子供が独立して家を出た後は再び一体空間に戻すことが容易にでき、空間を広く有効に使うことができます。

 

●実例2:二人兄弟のための子供部屋
次に紹介するのは二人兄弟のための子供部屋の事例です。緑美しいサンクンガーデン(掘りこまれた庭)に面した、心地よい部屋です。

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(カズノキハウス・・・設計:しまだ設計室/写真撮影:西川公朗)

子供部屋は一室空間ですが、将来必要に応じて中央で区切り兄弟別々の部屋として使うことができます。入口の引戸が2枚あるため、中央で区切ったときにもそれぞれの部屋が独立した入口をもつことができます。いずれ子供が独立して家を出た後には一部屋として広々使えますから、趣味のアトリエにしたり、ゲストルームにしたり、夫婦の寝室をここに移したりと、様々な可能性を持った部屋となります。

 

子供部屋の大きさ

子供部屋をどれくらいの大きさにするか?・・・それは日々の生活での様々な子供の行為を、それぞれ「個室で行うか」「家族のいる空間で行うか」いずれとするかの方針によります。個室で行う行為が多ければ子供部屋は大きくする必要がありますし、個室で行う行為は最小限にしてなるべく家族のいる空間での行為を多くすれば子供部屋は小さくて済みます。

6畳あれば机とベッドとクローゼットが置けて、さらに遊ぶスペースが十分に確保できます。また、4畳半でも机とベッドとクローゼットはなんとか置けますから、その分リビングを広く確保して家族で共に過ごす場所を充実させることもできます。あるいは、思い切って3畳としてベッドとクローゼットだけを置き、デスクを置かない代わりに部屋の外にスタディコーナーを設けることもできます。そうすれば親子・兄弟がひとつながりの空間で過ごしながら勉強やデスクワークをすることができます。

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また、子供部屋の他にロフトを子供が遊べるスペースとする考え方もあります。ロフトのようにこぢんまりと籠れる空間が子供は大好きですし、おもちゃなどを出し放しにして遊べるスペースは重宝します。このようなスペースを設ければ、子供部屋自体は最小限の大きさにすることもできます。

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(荏田町の家:ロフト)

 

子供部屋への動線

「子供が帰ってきたとき、親と顔を合わせず玄関から子供部屋へと直行できるようなプランにはしないでほしい」・・・以前私が設計したお家では建て主さんからこのように希望されたことがあり、リビング・ダイニングの吹抜空間に階段を設け、必ずそこを通って2階の子供部屋へ行くプランとしました。

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(朝霞の家)

こうすれば、子供が帰ってきたとき、お母さんがキッチンで家事をしていても顔を合わせることができますし、吹抜けを介して子供部屋の様子を伺うことも容易です。今は子供も学習や友達づきあいなど、様々なストレスを抱えている時代です。いじめや自殺など痛ましい事件も頻繁に伝えられますが、子供のちょっとした表情から「変化のサイン」に親が気付くことが重要ともいわれます。家づくりにおいては「家族のフェイス・トゥー・フェイスのためのしかけづくり」も大切なことだと思います。

 

まとめ

子供部屋とは、子供が成長し家を出るまでの間に過ごす場所です。子供は月日と共に著しく成長しますし、子供が巣立って家を出て行った後に子供部屋のスペースをどう利用するかという課題もあります。つまり、子供部屋を考えることは、住まいの将来を考えることにつながるのです。是非、将来にまで思いを巡らせながら、悔いのない家づくりをしていただきたいと思います。

新井 崇文

新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士

新井 崇文(あらい たかふみ)

自然素材に包まれた、住み心地の良いデザイン住宅づくりを目指す傍ら、共働き家庭で家事と子育てもこなすイクメン設計士。「生活者の視点に立った住宅設計」の専門家。
新井アトリエ一級建築士事務所 ホームページ ブログ
平成24年8月に 「荏田町の家」がTV番組「渡辺篤史の建もの探訪」にて放映

 

 

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