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【続編】住まいの心地良さや機能性を向上させる、
照明のテクニックとは?

監修:新井 崇文(新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士)

照明は家づくりにおいて、とても大切な要素です。前回のコラムでは照明計画の総論として、人が心地よくリラックスできる光の本質についてご紹介しました。本コラムでは照明計画の各論として、「照明器具の呼び方」「光源の種類」「照明配置のテクニック」についてご紹介します。

照明器具の呼び方

照明器具について話をするとき、呼び方が分からなくて「ほら、あのぶら下がっているやつ・・」とか「天井にペタッとしているやつ・・」などと説明してしまうことはありませんか? うまく伝えるのは意外と難しいもの・・・ですよね。実は、照明器具はその設置形態によって呼び方があります。これを知っているTMG15だけで説明が簡単にできるようになりますよ!


左から順に:ブラケット、ダウンライト、ペンダント、フットライト、フロアスタンド、
ライティングダクト、スポットライト、シーリングライト、テーブルスタンド

 

ライティングダクトはスポットライトやペンダントなど様々な照明器具を吊り下げることができ、着脱も自在なので、家具レイアウトの変更にも対応でき便利です。このライティングダクト、新築時であれば天井に埋め込みますが、既存の住宅でも後付けできる製品があります。賃貸住宅でも設置できますので、普通のシーリングライトでは味気ないという方は是非活用してみて下さい。

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(画像引用:http://www.odelic.co.jp/products/rail/

 

光源の種類

照明器具は光源にもジャンル分けがあります。現在一般的な3つの光源について、概略をご紹介します。

1) 白熱灯・・・昔からの一般的な電球です。暖色でリラックス感ある色合いのため、空間の雰囲気づくりには重宝する光源ですが、消費電力が高いため、省エネ・地球温暖化対策の点から現在少なくなりつつあります。

2) 蛍光灯・・・白熱灯よりも消費電力が低く、現在広く一般的に使われている光源です。色合いは昼白色から電球色(暖色)までいくつかのタイプがあります。

3) LED・・・2014年に日本人開発者が青色LEDでノーベル物理学賞を受賞して、今や広く知れ渡るようになった、あのLEDです。蛍光灯よりさらに消費電力が低く、今後さらに普及が進むと見られる光源です。色合いも蛍光灯と同じく昼白色から電球色(暖色)までいくつかのタイプがあります。

省エネ性や電球寿命としては1)白熱灯→2)蛍光灯→3)LEDの順でどんどん性能が良くなりますが、価格も同じ順で高くなります。コストにゆとりがある場合は全般的にLEDを導入できますが、コストを抑える必要がある場合は適材適所の使い分けが必要になります。リビング・子供部屋や外部のエクステリア照明など長時間点灯する場所には蛍光灯やLEDを設置し、廊下やトイレなど短時間しか点灯しない場所には白熱灯を設置するのが一般的な考え方です。

また、これらとは別に、「ハロゲンランプ」という光源があります。上記3つの光源に比べて演色性が高い(色合いが良い)特長があります。一言でいえば「食事がおいしく見える!」ということ。我が家ではダイニングテーブル上の照明だけはこのハロゲンランプを採用しています。飲食店の照明や、ケーキ屋さんのショーケース照明などでもよく使われています。

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(荏田町の家)

 

照明配置のテクニック

照明計画とは「光のデザイン」をすることであって、単に「照明器具のセレクト」をすることではありません。では「光のデザイン」とはどのように考えればよいのでしょうか。欲しいのは「照明器具」ではなく「明るさ」です。室内には床・壁・天井や家具があります。それらの「どこが明るく照らされていてほしいのか」「それを照らすためにはどのような器具をどこに配置すればよいのか」を考えていくのです。設計者によりその考え方には多少の違いがありますが、私の考えるセオリーをいくつかご紹介したいと思います。

 

1) 目立たせたい部位に光を当てる(間接照明)

光源が直接見えるとまぶしく感じるため、相対的にその他の部分が暗く感じられます。光源を直接見せず、床・壁・天井や家具などに光を当て、そこから反射する間接的な光を見せると、目にやさしく、やわらかい雰囲気が感じられます。この手法を「間接照明」といいます。その際、デザイン上ポイントとなる「目立たせたい部位」に光を当てると美しいシーンがつくれます。植栽があればそこに光を当てると良いでしょうし、デザイン上ポイントとなる階段があれば安全性確保の意味も含めて階段廻りを明るく照らすと良いでしょう。

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(朝霞の家:手すり下部に仕込まれた間接照明が階段廻りを照らす)

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(荏田町の家:植栽廻りを照らす外部照明)

2) 灯りの重心を下げる

たき火に当たり、ゆらめく炎を眺めながら過ごす心地よさ・・・その要素のひとつは、「低い位置に光溜まりがある」ことです(この手法を「灯りの重心を下げる」といいます)。ダイニングテーブル上のペンダントをテーブルごしに顔が見えるぎりぎりの位置まで下げたり、フロアスタンド・テーブルスタンドを設置したりすることで、灯りの重心を下げることができます。また、こうしてリビングやダイニングに重心の低い光溜まりができると、人が集う空間の中心感が形成されてきます。

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(荏田町の家)

3) 陰翳をつけることで空間に広がりを

「最近、夜眠れなくて・・」という方はいませんか?仕事のこと、人間関係のこと・・・いろいろ悩みはあるかもしれませんが、夜の住まいの照明が明るすぎるとしたら、それも原因のひとつかもしれません。陽光あふれる昼間のような室内照明のもとでは、心身はリラックスできません。夜の住まいの照明は控えめな明るさをベースとし、食卓や作業スペースなど明るさが必要なところだけを明るくしたほうが良いでしょう。照明の色も、日の光のような昼白色よりも、電球色(暖色)のほうが、夜のくつろいだ雰囲気がつくれます。

世の中には「陰翳もないほど明るい空間」が多く見受けられますが、実は「明るい部分」と「暗い部分」のメリハリがあるほうが良いと私は考えています。暗がりがあるからこそ明るい部分が感じられるのです。モノも陰翳があるほうが美しく見えます。例えば人の顔写真などは、全体が明るいと平べったい印象になりますが、片側から光が当たり陰翳があると堀の深い美しい印象になります。空間の美しさも同じです。さらにテクニックをいえば、空間の対角に光溜まりを設け、中間によどみ(暗がり)を設けることで空間の広がりを演出することができます。

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(朝霞の家)

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(荏田町の家)

 

まとめ

住まいの居心地の良さを決める大きな要素は「光」といえます。その「光」とは・・・昼間は日の光、そして夜は照明の光です。つまり、一日の半分は照明の光が支配する空間に我々は身をおいているということになります。そんな大切な存在である「照明」のあり方に興味をもち、こだわってみてはいかがでしょうか? きっと日頃の住まいの空間が心地よく、愛おしいものになることでしょう!

新井 崇文

新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士

新井 崇文(あらい たかふみ)

自然素材に包まれた、住み心地の良いデザイン住宅づくりを目指す傍ら、共働き家庭で家事と子育てもこなすイクメン設計士。「生活者の視点に立った住宅設計」の専門家。
新井アトリエ一級建築士事務所 ホームページ ブログ
平成26年8月に 「荏田町の家」がTV番組「渡辺篤史の建もの探訪」にて放映

 

 

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