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住み心地を大きく向上させる、断熱性能とは?

監修:新井 崇文(新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士)

夏涼しく、冬暖かい家に暮らしたい・・・そんな願いはどのようにすれば叶うのでしょうか。冷暖房設備・・・?いえいえ、それ以前に大切なことがあります。それは、断熱です。本コラムでは、「断熱の基本」「断熱工法の種類」「断熱材の性能」についてご紹介します。

断熱の基本

以前、秋深まる10月頃に山の中でキャンプをしたことがあります。10月とはいえ、ある程度標高の高い場所だったため、日が暮れ、夕ご飯を食べていると、だんだん寒くなってきました。夕食が終わり、早々と寝支度を整えてテントに入りましたが、それでも寒さは収まりません。厚着をして、寝袋にくるまって、ようやく落ち着いて寝ることができました。

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テントは生地一枚で外気と接していますから、テントの中が寒いのは当たり前といえばそれまでですが、一般の家でも断熱がなければ実はこのテントと同じような状況なのです。

断熱とは、家の外皮(床・壁・天井など)部分で熱を遮断することです。そのために床・壁・天井などへ設置する材を「断熱材」といいます。例えば炎天下の夏の日、屋根や壁は日射により非常に高温になります。この熱が室内に伝わるのを防ぐのが断熱材です。また冬は、室内の熱が、屋根や壁を通して冷たい外部へどんどん逃げていきます。その熱の移動を防ぐのも断熱材です。

断熱材は魔法瓶やクーラーボックスのような役割を果たします。断熱でまず大切なことは、全体を隙間なくくるむことです。例えば魔法瓶やクーラーボックスにどこか一か所でも穴が開いていたら・・・熱が逃げてしまいますよね。それと同じで、家の断熱も床・壁・天井(屋根)の全体を隙間なくくるむことが大切です。

 

断熱工法の種類

 

●天井/屋根断熱と床下/基礎断熱

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天井断熱か屋根断熱かは、家の形状に合わせて選択することになります。フラット天井で小屋裏空間のある家では天井断熱として断熱面積を小さく抑えるのが合理的ですし、勾配天井の家では必然的に屋根断熱となります。
床下断熱か基礎断熱かは考え方次第での選択となります。床下断熱は断熱面積を小さく抑えることができるコストメリットがありますが、玄関土間や浴室のように、床が掘りこまれた部分の断熱や、床を貫通する給排水管廻り等の気密処理には配慮が必要です。床下には基礎パッキンを通じて外気を導入し、換気を図ります。これに対して基礎断熱は床下も含めた家全体を確実に断熱することができます。床には適所に換気ガラリ等を設け室内と床下との空気を対流させ、床下空間の換気を図ります。

 

●外断熱と充填断熱

外断熱と充填断熱との差は、断熱を設置する位置の違いです。

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木造住宅の場合、充填断熱は柱の中に断熱材を設置します。これに対して外断熱は柱の外側に断熱材を設置します。充填断熱は省スペースで設置でき、従来の木造住宅では一般的な工法といえますが、断熱材部分に室内の湿気が入りこむと結露する恐れがあるため、気密の施工に配慮することが大切です。外断熱は比較的新しい工法で、結露がおきにくく、柱間のスペースも自由に使えるメリットがありますが、コストは高くなります。また、高い断熱性能を求める場合は、外断熱+充填断熱とする方法もあります。

 

断熱材の性能

断熱性能は断熱材の「材質」と「厚み」により決まります。断熱材としては、材の中に空気を閉じ込められるものが適しており、現在一般的に用いられているものとしては例えばグラスウールといったものがあります。

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(画像引用:https://www.isover.co.jp/products/magusupaiero

断熱材の厚みは大きいほど断熱性能は増しますが、現実的にはスペースやコストの制約もあります。そのような中、現在日本では断熱性能に対して「次世代省エネ基準」という目標値が定められており、断熱材の厚みを決める目安となっています。この基準では日本全国、沖縄から北海道までを気候により6つの地域に区分し、それぞれの地域での断熱性能の目標値を定めています。

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(画像引用:http://jutaku.homeskun.com/legacy/syouene/syouene/syouene.html)

この次世代省エネ基準は、欧米の基準にかなり近づいた内容となっていますが、フランスなどの基準に比べればまだ低い基準であり、また欧米各国の基準は「義務基準」であるのに対して日本の基準のみは「努力目標」に留まっているのが実情です。

省エネへの配慮から、今後はより高い断熱性能が求められていくと考えられます。高い断熱性能を確保することは、省エネのみならず、快適性にも大きく寄与します。

例えば冬、吹抜けなど天井の高い部屋では、断熱性能が低ければ外皮部分で冷やされた空気が足元に廻り込み(これを「コールドドラフト」といいます)、エアコンなど室内空気を対流させる暖房だけでは快適性が得られません。そこで床暖房などの輻射暖房が必要となります。これに対して断熱性能が極めて高ければ外皮部分も室温全般に近づけることができ、不快なほどのコールドドラフトは発生せず、エアコン1台でも室内を快適に暖めることができると考えられます。

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まとめ

断熱の効用について、ご理解いただけましたでしょうか。断熱は快適性に大きく影響し、省エネ・エコという点でも重要です。また実際に住宅入居後の住み心地に関して行われたあるアンケートでは、間取りやデザインといった目に見える要素にも増して、冬の寒さや夏の暑さといった目には見えない快適性に関する要素が不満の上位にランクインしたという調査結果も出ています。家づくりにおいては、限られた予算でいかに要望を実現するかということがポイントになりますが、断熱など快適性に関わる要素も重視し、計画の初期段階で、適切な予算を確保したいものです。

新井 崇文

新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士

新井 崇文(あらい たかふみ)

自然素材に包まれた、住み心地の良いデザイン住宅づくりを目指す傍ら、共働き家庭で家事と子育てもこなすイクメン設計士。「生活者の視点に立った住宅設計」の専門家。
新井アトリエ一級建築士事務所 ホームページ ブログ
平成26年8月に 「荏田町の家」がTV番組「渡辺篤史の建もの探訪」にて放映

 

 

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