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健やかで快適な暮らしを実現するための換気とは?

監修:新井 崇文(新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士)

新鮮で心地よい空気に囲まれて過ごしたい・・・それは誰もが願うことでしょう。家づくりにおいて、換気もまた重要な事項です。本コラムでは「換気の必要性」「換気の基本」「結露対策」「花粉症対策」についてご紹介します。

換気の必要性

ある冬の日、昔ながらの木造家屋に宿泊したことがあります。外壁や窓廻りはさほど気密性がなく、隙間風がビュービュー入ってきます。室温は外気温とほぼ変わらないのではないか、とすら思えました。厚着をして布団にもぐりこむと体はなんとか暖かいのですが、布団から出ている顔だけが寒く、特に鼻先が凍りそうだったのを覚えています。

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昔の木造家屋はどの家もこのように隙間風だらけの状況だったのではないでしょうか。しかし近年は建物や窓の気密性が向上し、いわゆる「高気密住宅」と言われる省エネ性に配慮した住宅に変わってきました。家が高気密になれば隙間風は減り、冬の寒さは軽減されます。しかし隙間風が減ることはすなわち換気が減ることにもつながり、湿気が溜まることによる結露や、建築材料に含まれる化学物質が室内に溜まる「シックハウス」問題が生じました。昔は隙間風により自然と換気が行われていたのですが、今は高気密のため換気は計画的に行わねばならなくなったわけです。

 

換気の基本

換気はどうすれば出来るのでしょうか・・・?「穴が一か所あいていれば空気が出入りできるのでは?」・・・いえいえ、一か所では不十分なのです。換気も通風と同じで、穴が2ヶ所あることで、効率的な換気ができるのです。つまり、「給気口」と「排気口」です。そして換気は通風と異なり、最小限の穴で効率的に空気を動かす必要がある(例えば冬、換気の度に大きな窓を開けていては室内が冷えきってしまいます)ため、ファン(換気扇)の力を利用することになります。このファンの配置手法には3つの方式があります。

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●第一種換気
給気口と排気口の双方にファンを設ける方式です。安定した換気が行えますが、イニシャルコスト、ランニングコストとも高くなります。

●第二種換気
給気口のみにファンを設ける方式です。給気口からファンで外気が押し込まれ室内が正圧(通常より気圧が高い状況)となるため、排気口から自然と空気が押し出されます。主に病院の手術室やクリーンルームなどで採用されます。

●第三種換気
排気口のみにファンを設ける方式です。排気口からファンで空気が排出され、室内が負圧(通常より気圧が低い状況)となるため、給気口から自然と空気が入ってきます。住宅ではこの方式(あるいは第一種換気)が一般的に採用されています。

さて、給気口・排気口の配置はどうすればよいでしょうか。排気口(ファン)はキッチン・トイレ・浴室など、汚染空気が発生する部分に設けます。これにより汚染空気を即座に室外に排出することができます。給気口は排気口となるべく離し、家全体に空気の流れができるようにします。

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給気口はソファやテーブル・椅子の近くなど、人が滞在する場所に設けると冬寒いですので、平面的、あるいは断面的に位置を工夫したほうがよいでしょう。

 

結露対策

特に冬場、結露に悩まされるお家は多いのではないでしょうか。結露は湿気を含んだ空気が冷やされることで、空気中の水分が気体から液体に変化する現象です。空気は温度が低くなると空気中に含むことができる水分量が減るため、結露が生じるのです。室内で最も冷えている場所といえば通常、窓ガラスやアルミサッシですね。従って、まずこの部分で空気が冷やされ、空気中の水分が液体に変化し、窓ガラスやアルミサッシに付着するのです。

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結露の対策のひとつは、室内で極端に温度の低い場所をなくすこと。窓ガラスをペアガラス・トリプルガラスにしたり、アルミサッシを樹脂サッシや木製サッシにしたりといった対策が挙げられます。そしてもうひとつの対策は、湿気を多く含んだ空気を換気で室外に排出すること。キッチンでの調理中は換気扇を回しますので湿気は排出されやすいのですが、要注意なのは換気扇で即座に排出できない湿気です。

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冬場は鍋がおいしい季節ですが、テーブル上でカセットコンロを炊きながら鍋を囲んでいると、かなりの量の水蒸気が室内に拡散されます。洗濯物の室内干しでもかなりの水蒸気が発生します。また、風呂から上がる際などに扉をしばらく開けたままにしていると、かなりの水蒸気が洗面所を通じて室内に拡散されます。では、室内に拡散された水蒸気はどこに行くのでしょうか。私は自宅で室内数か所にセンサーを置き測定したこともありますが、水蒸気は室内の一番高い部分に流れます。湯気を含んだ空気は湿度・温度もとも高く、温度の高い空気は上昇する性質があるためと考えられます。このため、室内の一番高い部分にたまる湿気をうまく排出してやることが、湿気対策つまり効率的な換気につながります。室内の上部に排気口を設け、給気口は人の居住域を避けたあたりに配置すると、寒さを防ぎつつ効率的な換気ができるのではないでしょうか。

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花粉症対策

春が近づくころから、「春の訪れのうれしさ」とは裏腹に、「つらい季節がやってくる」と感じる方も多いのではないでしょうか。そう、花粉症の季節です。湿気や汚染空気を排出し、新鮮な空気を採り入れることは必要ですが、窓を開けてしまうと花粉がそのまま入ってきてしまいます。この時、換気設備は強力な味方となってくれます。給気口にはフィルターが設置されていますから、ここで外気に含まれる花粉は大部分がカットされます。これで、花粉を家に入れずに安心して換気ができますね。ちなみに給気口はふさがったままだと機能しませんので、きちんと開けることをお忘れなく・・。

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(給気口:閉)                  (給気口:開)

なお、換気以外で家に持ち込まれる花粉のほとんどは、衣類に付着したものです。外出から戻ったら、まず玄関先で花粉をはらうことも大切ですが、それでもコートには花粉が付着していますので、コートはなるべく玄関廻りのコート掛けに収納し、他の部屋まで持ち込まないのが理想的です。またこの時期、室外で洗濯物を干すと花粉が付着しますので、花粉症の方は、室内干しをされたほうがよいでしょう。その時、室内には多量の水蒸気が発生しますので、換気をお忘れなく!

 

まとめ

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山にハイキングに行ったときの清々しさ・・・それは景色の良さもありますが、空気の美味しさも大事な要素なのではないかと思います。人が呼吸するのと同様に、家も呼吸するものです。常に新鮮な空気を入れてあげることで健康的な家となり、そこで暮らす人も健康的な暮らしができるのではないでしょうか。是非、日々の暮らしで換気を意識して、健やかで快適な暮らしを手に入れていただきたいと思います。

新井 崇文

新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士

新井 崇文(あらい たかふみ)

自然素材に包まれた、住み心地の良いデザイン住宅づくりを目指す傍ら、共働き家庭で家事と子育てもこなすイクメン設計士。「生活者の視点に立った住宅設計」の専門家。
新井アトリエ一級建築士事務所 ホームページ ブログ
平成26年8月に 「荏田町の家」がTV番組「渡辺篤史の建もの探訪」にて放映

 

 

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