電気設備やコンセントは早めに
計画して後悔のない家づくりを
監修:新井 崇文(新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士)
電気設備やコンセントは暮らしに欠かせない要素です。これらの配置計画は家づくりにおいて非常に大切です。
本コラムでは「エアコンが取り付けられない!?」「コンセント配置のポイント」についてご紹介いたします。
エアコンが取り付けられない!?
賃貸住宅で暮らす知人から「エアコンを設置したい場所があるのだが、取り付けられなくて不便をしている」という話を聞きました。「エアコンが取り付けられないというのは、コンセントがないから?」と聞くと、「コンセントはある」というのです。「ではエアコンを取り付けるための壁面スペースがないから?」と聞くと「壁面スペースはあるには、ある」というのです。「では、なぜ?」とよくよく聞いてみると「エアコンを取り付ける位置にちょうどコンセントが重なっていて、エアコンを取り付けるとコンセントに繋げられないし、コンセントを除けようとするとエアコンが取り付けられない」というのです。それを聞いてようやく状況が呑み込めましたが、そんなことがあるものかと、実に驚きました。
■壁付けエアコン事例
通常はコンセントを除けた位置に壁面のスペースが確保されており、エアコンを取り付けることができます。
部屋は床・壁・天井ができて完成ではありません。そこに電気設備が設置され、コンセントに繋がれることで、住まいの快適性や機能が補完されます。その際、家具や人の動作と干渉しないよう気をつけなければなりません。コンセントや電気配線は壁や天井の内部に仕込まれるため、家が完成した後で移設や増設するのは容易ではありません。ですから設計時に人の行為・動きを周到に想定し、家具・電気設備の配置計画を練る必要があります。これも設計における重要なデザインワークであると思います。
■コンセント配置は家具配置も想定した上で
コンセント配置のポイント
コンセントの配置について、いくつかのポイントをご紹介します。
●掃除機用コンセント
コンセントの配置というのは、特別難しいものではありません。各部屋に置く電気設備を図面にプロットしていき、その近傍にコンセントを配置すればよいのです。ただし、忘れがちなものがあります。それは、「使う時だけそこに持ち出してくる電気設備」です。代表的なものは掃除機。ある程度のコード長がありコンセントから離れた場所まで掃除できますが、限度はあります。一般的な掃除機のコード長は約5mで、本体の長さを含めてもコンセントから7.5m程度の範囲が掃除可能な限度となります。
部屋を移る度にコンセントをつけ変えていったり、延長コードを取り付けたりするはおっくうですので、なるべく避けたいものです。でも、おおよそ1フロア15坪程度の家であれば、フロアの中央付近にコンセントをうまく配置すれば、どの部屋の隅までもコード長は届きます。
■掃除機用コンセント配置の事例
もしそれより大きな家であれば、2ヶ所以上のコンセントが必要となるかもしれませんが、なるべく少ないコンセント数で家じゅうを掃除できるよう、図面上での検討をしておくと良いでしょう。
●ダイニングテーブル用コンセント
ダイニングテーブルでの楽しい食事のひととき・・・さほど頻度は高くないかもしれませんが、ダイニングテーブルではホットプレートなど電気設備を使うこともあります。でも、ダイニングテーブル近傍にコンセントが設置されていないと、遠くの壁から通路をまたいでコードを伸ばしてくることになり、通りがかった人がコードに足をとられて転倒・・・なんて事故につながりかねません。ダイニングテーブルから通路をまたがない近傍の位置にコンセントを配置することをお薦めします。その際、コンセントは壁付けでもよいですが、床に設置できればテーブル上への配線が人の動線と交差せず、より良いと思います。
●キッチン用コンセント
キッチンでは、冷蔵庫や電子レンジといった大物の電気設備のためのコンセントを設置し忘れることはまずないと思いますが、作業台で調理作業するためのコンセントも忘れずに設置したいところです。ハンドミキサーやコーヒーメーカー・電動ミルなどを使う時に重宝します。
●収納部分のコンセント
収納スペースについても、「そこに何を置くか、何を使うか」をよく考え、必要に応じてコンセントを設けておくと便利です。例えば、電動自転車のバッテリーをどこに収納するか・・・出かける間際に思い出して取り出すこともあるため、玄関近傍の収納棚や収納スペースに置いておけると便利です。そして収納場所が決まったら、コンセントの設置を忘れないようにしましょう。
■自転車用バッテリーやハンディタイプ
掃除機を収納する棚にコンセントを仕込んだ事例
また、CDコンポなどのオーディオ機器・・・本格的な機器であればリビングのTV廻りに置くケースが多いかと思いますが、サブとして使うコンパクトな機器であれば、書斎やダイニングの棚などに置きたくなるもの。造りつけの棚であれば、予めコンセントを仕込んでおくと便利です。
■ワークスペースの本棚にコンセントを仕込んでCDコンポを設置した事例
●デスク廻りのコンセント
現在はインターネットも普及し、パソコンはほとんどの家庭にあるのではないでしょうか。そして例えばデスクにパソコンを置けば、ルーターといった通信機器、サーバー・外付けハードディスク・NAS(ナス)といった外部記憶装置、プリンター等の出力装置も付随してきます。また、デスク廻りには電話機の親機やFAXなども設置されることが多いため、トータルではかなりの口数のコンセントが必要になります。今後も通信関係の機器は増える可能性があることを考えると、新築時には、デスク廻りのコンセント数は余裕をもって計画しておきたいところです。
私が設計する住宅では、家族がみんなで利用できる幅広のデスクを造り付けで設計することがあります。その際、パソコン・プリンタ等の配線コードがデスク上をなるべく這い廻らなくて済むよう、デスク上に何箇所か配線穴を設けておくことがあります。
■造り付けデスクの事例:幅2.7mのデスクに3箇所の配線穴を設けている
これによって、各電気設備は最寄りの配線穴からコードをデスク下に落とすことができ、デスク下で配線を展開することができます。また、ルーターなどデスク上になくて良い機器はデスク下に配置しますが、そのまま床に置くと掃除機をかける際に邪魔になりますので、そういった機器を置くための台を造り、床から浮かせておくようにしています。
■デスク下に機器設置用の台を造り付けた事例
●家具を除けたコンセント配置を
その他一般的なコンセント配置の注意事項としては、「コンセントは家具を除けた位置に配置する」ということです。そのためには設計時に置きたい家具を想定し、寸法を確認し、図面上にプロットした上でコンセント配置を練る必要があります。地味な作業ではありますが、これをやっておかないと、住み始めてからの大きな不満となりかねません。
■コンセント配置は家具を除けた位置に
●外部のコンセント
ライフスタイルに応じて、外部へのコンセント配置も検討すると良いでしょう。庭でホームパーティをする場合はホットプレート等の電気設備を使うかもしれませんし、ガレージで車のメンテナンスや日曜大工をする場合は工具等の電気設備を使うかもしれません。雨がかり部分にコンセントを設置する場合はフード付きの防雨タイプコンセントを採用するようにします。
■庭にフード付の防雨タイプコンセントを設置した事例
まとめ
暮らしに欠かせない電気設備とコンセント配置について、実例を中心にご紹介しました。壁面に埋め込む電気設備としてはコンセント以外にも、テレビ端子・LAN端子・インターホン・照明スイッチ等がありますが、いずれも家が完成してからでは変更が難しいものであるため、設計時に早めに計画して後悔のない家づくりをしていただきたいと思います。