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家計と環境に優しい「省エネライフ」を実現するための手法とは?

監修:新井 崇文(新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士)

現在CO2削減・地球温暖化対策として、省エネに配慮した家づくりが重要視されています。また省エネに配慮した家は家計への負担も軽減できます。本コラムでは「省エネの基本は建築・植栽における配慮」「太陽光の利用手法」「その他の省エネ手法」についてご紹介します。

省エネの基本は建築・植栽における配慮

省エネに配慮した家とはどのような家でしょうか・・?
まず大切なのは建築形状や植栽における配慮です。「冬場は効率的に日射を取り込む」「夏場は軒・庇・植栽により日射を遮蔽する」そして「高気密・高断熱・窓の高性能化により熱負荷を抑制する」といった基本的な計画をきちんと行うことが大切です。

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(冬場)

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(夏場)

その上で、さらなる省エネを目指すため、設備面での工夫を検討します。つまり「設備面での自然エネルギー利用」を考えるわけですが、まず最も有効に利用できる自然エネルギーとは何でしょうか?
・・・それは、太陽光です。

 

太陽光の利用手法

建築・植栽における配慮をした上で、太陽光をさらに活用するには、様々な手法があります。

 

●太陽光発電

住宅で消費するエネルギー源のうち、約半分を占めるのが電気です。

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(画像引用:http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/actual/

 

この需要の多いエネルギー源である電気をつくりだすのが太陽光発電です。太陽光発電パネルは通常、日当りの良い屋根面や屋上に設置します。最も発電効率が良いのは南向き30度勾配の面ですが、水平面でも南向き30度勾配の面の約9割の発電効率は見込めますので、屋上などに水平面で設置するのも十分効果が見込めます。

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発電した電力はその住宅でまず消費します。電力が余った場合、そのまま貯めておくためには蓄電池などにかなりの設備投資が必要となるため、電線を経由して売電するのが一般的です。

 

●太陽熱温水器
住宅では給湯に多くのエネルギーを使用しています。特に日本人は風呂好きで毎日湯船に浸かる習慣があることも影響し、家庭でのエネルギー消費量の3割強を給湯が占めています。

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(画像引用:http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/actual/

 

この給湯に使う温水を太陽の熱でつくりだすのが太陽熱温水器です。直射光のよく当たる屋根面に設置しますが、最も効率が良いのは太陽光発電と同じく、南向き30度勾配の面です。

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太陽光発電に比べて小規模の設置で費用対効果が見込めることから、日当りの良い屋根面が小面積しかとれない場合や、予算が限られている時にも活用できる自然エネルギー利用手法です。通年で安定した給湯需要を賄うには、南向き30度勾配の面に設置したとして、1家庭あたり4~6m2程度の設置面積が目安となります。

 

●空気集熱式ソーラーシステム
住宅では暖房にも多くのエネルギーを使用しています。日本列島は南北に長く、地域ごとの寒暖差に応じて暖房エネルギーの使用状況も異なります。

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(画像引用:
http://www.mlit.go.jp/singikai/infra/architecture/energy_conservation/images/070823_3.pdf

 

那覇(沖縄)以外の地域では、冷房エネルギーよりも暖房エネルギーのほうが大幅に使用量の大きいことが読み取れます。高気密・高断熱を図り、太陽の日射を採り入れた家づくりをして、冬季の暖房負荷を減らすことの重要性が改めて感じられます。そうした中で、太陽光をさらに積極的に暖房エネルギーとして利用しようというものが空気集熱式ソーラーシステムです。

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冬季、軒先から屋根内部へ取り込んだ空気が日射で暖められ、棟部分まで上昇してきたその暖気をダクトで床下へ、そして床面のガラリから室内へじわじわと送りこみ、家全体を暖房するシステムです。日射のない日には補助暖房が必要ですが、晴れた日には自然の力で家全体がヌクヌクと暖まる喜びを感じることができます。また夏季には、夜間に放射冷却で冷やされた屋根部の空気を同じくダクトで床下へ送り込み家全体を冷却することで、昼間の冷房負荷を軽減する効果も期待できます。

太陽光エネルギーの利用については上記いくつかの要素を組み合わせたものや、その他のものなど様々な機構が開発されています。どのような設備を採用すると良いか一概には言えませんが、住宅の立地する環境や気候条件、予算、住まい手の価値観・好みなどを鑑みて、よく考える必要があると思います。

 

その他の省エネ手法

まず、太陽光以外の自然エネルギーの利用手法について、ご紹介します。

 

●風力発電

自然エネルギーを利用した発電手法として、太陽光発電と並び全世界で普及しつつあるのが風力発電です。風が吹けば季節・昼夜を問わずいつでも発電できる長所があります。ただ、発電効率が高いのは産業用の大型のものであること、ある一定以上の強風がないと発電効率が見込めないことから、一般的には風の強い海上や岬、山の尾根などに大型の装置が設置されています。

住宅用に設置できるような小型の風力発電も開発されてはいますが、多くの住宅が立地する都市部では障害物の影響で通常さほど風が強くないため、さほど効果的ではないのが現状です。また、風力発電からは騒音や低周波音による健康被害が発生するケースがあり、住宅のような生活空間の近くに設置するには慎重な検討が必要と考えられます。

一方で、風力発電は風の持っているエネルギーのおよそ40%を電力に変換でき、太陽光発電よりも発電効率が高いと言われているため、今後は住宅用に弱い風速でも効率よく発電できる風力発電設備の開発が求められていくでしょう。

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(画像引用(左):
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B9%B3%E5%AE%89%E5%90%8D%E5%B2%AC)
(画像引用(右):
http://kenjiwajima.blog.fc2.com/blog-entry-799.html)

 

●木質バイオマス
バイオマスとは、動植物から生まれた有機性の資源のことです。石油や石炭などの化石資源とは異なり再生可能な資源です。このうち、森林を維持管理する上で発生する「木質バイオマス」は住宅で利用できる有効なエネルギーです。
「薪ストーブ」は間伐材などから薪を自己調達すれば、費用をかけずに強力な暖房エネルギーを入手できる手法です。薪割りの時間・体力と、薪をストックする多少のスペースは必要となりますが、そうしたスローな生活、そして炎のある暮らしを楽しみたい人にはお薦めです。

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(画像引用(左):http://kenmoku-brog.jugem.jp/?eid=797)
(画像引用(右):http://www.hidamari-home.jp/event/2012/12/01114104.html

「ペレットストーブ」は間伐材や製材で生じる木くずを固めた「ペレット」を使用するものです。薪ストーブと同様に炎が見られる暖房器具です。燃料のペレットは購入が必要になりますが、ストックは薪に比べ容易です。

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(画像引用:
http://aibaeco.co.jp/wp/wp-content/uploads/2014/11/63427f68c65cb00cfa35e10b308aaff6.jpg

 

●雨水利用
日本は年間降水量が1,500~2,000mmと多く、どのような敷地にも分け隔てなく雨が降り注ぎます。雨はそのまま下水へ放流すれば豪雨時は都市インフラを圧迫し、浸水被害にもつながりますが、いったん各住宅で雨水タンクに貯水し、トイレの洗浄水や植栽への散水等に利用すれば、都市レベルでの豪雨対策になり、各家庭における水道代の節約にもつながります。
晴れの日には太陽光を利用し、雨の日には雨水を利用する・・・毎日の天気がなんとも楽しみではありませんか?!
また、雨水タンクに貯水しきれない分の降雨も、そのまま下水に放流するのではなく、浸透枡から地中に浸透するようすれば、河川の氾濫や浸水の対策に貢献できます。

次に、自然エネルギー利用以外で、省エネに効果的な手法についてご紹介します。

 

●節電
省エネといえば、まず思いつくのは節電ではないでしょうか。はじめに、家庭における電気使用量の内訳を見てみましょう。

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(画像引用:http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/actual/

では、省エネを図るにあたり、どこから節電していけばよいでしょうか・・?

電気使用量の大きいもののうち、冷蔵庫、テレビを節電するのは難しいとして、まず工夫の余地があるのは照明です。採光に配慮した家をつくることができれば、昼間は最小限の照明だけですみます。夜も照度は控えめにして落ち着いた明るさの中で過ごせば、節電になると同時に心身も休まります。電球は白熱灯よりもLEDや蛍光灯を主体とし、消費電力を抑えるようにします。

次に考えるべきはエアコンです。日射遮蔽と通風に配慮した家づくりで夏季の冷房使用量を抑え、気密・断熱に配慮した家づくりで冬季の暖房使用量を抑えることはやはり大切です。また、夏の暑い日にはすぐにエアコンをつけるのではなく、まずは扇風機でしのいでみることも効果的です。6畳用エアコン1台と扇風機1台とを比較すると、扇風機の消費電力はエアコンのたった1/10程度に過ぎません!・・・昔からある扇風機は実はエコな設備でもあったのです。忘れずに活用したいものですね。

その他削減の効果が見込めるものとしては電気便座と電気ポットがあります。電気便座はOFFにして冷たさ防止にカバーをつける。沸かしたお湯は電気ポットを使わず魔法瓶で保温する。そういった工夫をすることで、それなりの消費電力削減が見込めます。

 

●アンペアダウン
アンペアダウンとは、各家庭の最大契約アンペア数を下げることです。電力会社は各家庭の最大アンペア数を確保できる電力を用意しなければなりませんから、各家庭がアンペアダウンを行えば発電量を抑えることができ、大きな視点における省エネにつながります。同時に各家庭の電力基本料金も下げることができます。

アンペアダウンをする場合、ブレーカーが落ちないような工夫が必要です。まず、「常に電気を使っている家電のアンペア数」を把握します。

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(画像引用:https://enechange.jp/articles/large-consumption-appliances/

そうして残りのアンペア数をおおよそ把握したら、「一時的に使う家電のアンペア数」を確認します。

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(画像引用:https://enechange.jp/articles/large-consumption-appliances/

そして「アンペア数の大きいこの家電とこの家電は同時に使わない」といったルールを家庭内でつくります。生活のストレスを抱えるほどの無理をすることはありませんが、少しの配慮をすることで不必要に大きな最大契約アンペア数を削減することにつながるのであれば、それは有効な省エネといえるでしょう。

 

まとめ

省エネには様々な手法があることを見てきました。生活上のストレスを抱えてまで取り組む対策は長続きしにくいものですので、無理なく、楽しく取り組めることが大切だと思います。それには家づくりの際に省エネをしっかりと視野に入れた計画を行うことが大切です。

新井 崇文

新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士

新井 崇文(あらい たかふみ)

自然素材に包まれた、住み心地の良いデザイン住宅づくりを目指す傍ら、共働き家庭で家事と子育てもこなすイクメン設計士。「生活者の視点に立った住宅設計」の専門家。
新井アトリエ一級建築士事務所 ホームページ ブログ
平成26年8月に 「荏田町の家」がTV番組「渡辺篤史の建もの探訪」にて放映

 

 

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