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心地よい住まいを実現するための内装材とは?

監修:新井 崇文(新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士)

家の内装材には素材・色・模様など様々な選択肢があります。内装材は空間の見栄えを決定づけるものですが、実はその他の点においても住み心地や満足感に大きく影響を及ぼします。では、それはいったいどのような内容なのでしょうか・・・? 本コラムでは「空気が違う!」「床材の選び方」「壁材・天井材の選び方」「自然素材の良さとは?」についてご紹介します。

空気が違う!

今の家に住み始めて最初の梅雨の頃のこと。蒸し暑い中、帰宅して家の中へ入ると「あれ?」と思いました。外は湿気で満ちているのに、家の中へ入るとカラッとしていて気持ちいいのです。「これはいったいどういうことだろう・・?」我が家における壁・天井の内装材は、1階を漆喰、2階を壁紙としています。試に2階へ行ってみると、こちらは湿度が高い感じです。室内の湿気を吸い取ってくれているのは、どうやらこの漆喰の力のようです。漆喰の持つ吸放湿作用の効力を肌で感じました。「内装材は見た目のデザインだけでなく、住み心地に大きく影響するものだ」ということを実感したひとときでした。

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次に、部位ごとに内装材の選び方を見ていきます。

 

床材の選び方

まず床材の選定から考えてみましょう。リビング・ダイニングなど一般部の床材として真っ先に思い浮かぶのは、木質フローリングではないでしょうか。木質フローリングは現在最もポピュラーな床材といえるかもしれません。

●木質フローリング
木質フローリングは2つの種類に大別されます。

ひとつは無垢フローリングです。単層フローリングとも言います。使用する形状で丸太から切り出した無垢材を使用した、単一の層から成るフローリングです。木材の繊維そのもので構成されているため、乾燥収縮による反りや割れなどが入りやすい面はありますが、天然木本来の風合いをもつことが大きな魅力です。木材の繊維が活かされているため吸放湿作用があり、室内の湿度の変化を和らげる効果があります。また木材の繊維には空気が多く含まれているため熱伝導率が低く、触ってもあまり冷たい感じがしません。無垢フローリングの性質は採用する樹種によりますが、一般的に針葉樹はやわらかく、触ると温かみがあるのに対し、広葉樹は硬く、触るとひんやりとする傾向があります。天然木の風合いを活かすため、表面塗装は強固な塗膜を形成するタイプよりも、木材に染み込むタイプ(含浸タイプ)が適しており、そのため液体汚れなどを長時間放置しておかないよう気をつける必要はあります。

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(無垢フローリング・・・画像引用:http://www.tilelife.co.jp/topics-flooring/flooring_choice/)

もうひとつは合板フローリングです。複層フローリングとも言います。薄くスライスした木材を重ね合わせ接着した合板の表面に、薄い天然木の化粧単板(突き板)や樹脂化粧シートなどを張ったフローリングです。合板を基材としているため製品安定性があり、反りや割れ・収縮などが生じにくいのが特長です。表面に張る単板(突き板) や樹脂化粧シートのグレードにより、風合いの良し悪しは様々です。表面塗装は強固な塗膜を形成して防汚性・清掃性に配慮されたものもあります。

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(複層フローリング・・・画像引用:http://www.tilelife.co.jp/topics-flooring/flooring_choice/)

どちらのフローリングを採用するかは、場合に応じて考える必要があるでしょう。掃除のしやすさ、汚れにくさという点では合板フローリングが比較的有利です。合板フローリングは反りにくく、板どうしの隙間も生じにくいため、液体をこぼしてしまってもフローリングの間に入りにくく、表面も汚れの色がつきにくい傾向があります。一方、無垢フローリングは反りや隙間が生じやすい傾向はありますが、一般家庭で節度ある生活をしていればさほど困るようなことはありませんし、もし液体をこぼした場合も早めに拭き取ればさほど跡はつきません。長く暮らしていく中で次第に色味はついていきますが、それも天然木の風合いと相まって、いい意味で「味がある」ととらえることもできます。賃貸住宅では不特定の方が入れ替わり居住し、どのような使い方(汚し方)をするかわかりませんから、合板フローリング(あるいは無垢フローリングであれば固めの広葉樹のもの)を採用するのが無難でしょう。しかし分譲住宅や注文住宅(オーナー住宅)であればそのような懸念はありませんから、無垢フローリングもぜひ検討したいところです。

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(荏田町の家:針葉樹の無垢フローリングを採用している)

また、フローリングで気になるのは傷つきです。合板フローリングは一定の硬さがありますが、重くとがったものが床に当たればさすがにへこむ場合があります。こうなると表面のつき板は破れ、基材の合板が見えてしまい、見栄えが悪くなってしまいます。これに比べ無垢フローリングは仮にへこんでも単一材で構成されているため見栄えはさほど変わりません。

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(無垢フローリングは傷がついても周囲とさほど見栄えは変わらない)

●水廻りの床材
さて、キッチン、洗面所、トイレなど水廻りの床材は何が良いでしょうか?
一般部と同じ素材で統一したい場合は木質フローリングがよいでしょう。

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(荏田町の家:トイレの床もフローリング)

ただ、「うちは水滴をよく床に落とすので、フローリングよりも水に強く、掃除のしやすい素材にしたい」という方には、コルクタイル、磁器質タイル、クッションフロア(CF)などの選択肢があります。

コルクタイルは自然素材であるコルク樫(かし)の表皮を固めたタイルで、弾力性があって歩きやすく、冷たさを感じず、さらっとした肌触りが特長です。各種塗装品があり、ある程度の耐水性があります。価格は少々高めですが「水濡れが気にならず、自然素材の温かみもある床にしたい」という時にぜひ検討したい素材です。

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(コルクタイル・・・画像引用:http://www.toa-cork.co.jp/cork_commodity/cork_tile/)

クッションフロア(CF)は塩化ビニールを用いた床材です。耐水性があり、清掃がしやすく、適度な弾力性があります。比較的手ごろな価格のため、水廻りに多く採用されています。色や柄などのバリエーションも豊富です。

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(キッチン床に木質フローリングと近似色のクッションフロアを採用した例)

磁器質タイルも水廻りではよく見られる素材で、耐久性・耐水性があり、清掃がしやすく、タイル特有のデザイン性もまた魅力です。素足ではひんやりとするので、スリッパ等を履く必要はあるでしょう。

 

壁材・天井材の選び方

現在最もポピュラーな素材は、クロス(壁紙)でしょう。清掃性に優れたビニールクロス、和紙など風合いの良い紙を用いた紙クロス、高級感のある織物クロスなどがあります。それぞれ、模様や色も豊富に用意されています。予算に応じて幅広いバリエーションから選べるのも魅力です。

一方、塗り壁もぜひ検討したいところです。塗り壁には、土壁、珪藻土壁、漆喰壁など様々な材質・色合いのものがあり、コテ使いにより表面模様も自由自在です。厚みのある素材のため、深みのある表情が得られます。こうした塗り壁には見た目以外にも特長があります。それは自然素材であること。吸放湿性があり、呼吸する素材とも言えます。冒頭にエピソードをご紹介した通り、我が家では1階の壁・天井の大部分を漆喰で仕上げていますが、梅雨時に外出から戻って室内に入るとカラッとした心地よさがあり、湿気を吸い取ってくれる塗り壁の効果を感じます。

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(荏田町の家:壁・天井は漆喰塗り)

塗り壁はクロス(壁紙)ほど価格が安くないこと、激しく汚損してしまうと修復に手間がかかる(対してクロスであれば比較的容易に貼り替えられる)ことから、賃貸住宅での採用は難しい面がありますが、分譲住宅や注文住宅(オーナー住宅)であればぜひ検討したいところです。

その他、壁・天井の仕上材としては木板張り、タイルなどがあります。

木板張りは壁・天井全域に採用すると山小屋のような素朴な雰囲気になり、室内の一部分にアクセントとして採用するのであれば、モダンなインテリアの中に効果的な温かみをもたらすデザイン要素となります。また、洗面所・浴室など湿気のある部位に木板張りを採用したい場合は、ヒバ・サワラなど水に強い樹種が適しています。我が家の洗面所・浴室では壁・天井をサワラの板張りとし、クリア塗装をかけています。服を脱ぎ裸になる場所ですが、壁・天井が板張りだと冬でも寒々しくなく、見た目にも温かみがあります。

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(荏田町の家:浴室・洗面室の壁・天井はサワラの無垢板張り)

タイルもまた水廻りに適した素材で、キッチン・洗面所・浴室などの壁面に多く採用されます。タイルは色・柄のバリエーションが豊富なため、水廻り空間の一部にワンポイントで採用して、デザインに彩りをもたらすことも効果的です。

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(朝霞の家:キッチンの壁にはシンプルな磁器質タイルを採用)

 

自然素材の良さとは?

木目柄がプリントされた樹脂系のシートや板など、一見「木」に見えるが違う素材でつくられているものが世の中にはあふれています。たとえ視覚情報としては「木だ」と認識したとしても、触れば冷たく、呼吸もしない材料です。それに対して本物の無垢の木は多孔質で空気を孕んでいますから触っても冷たい感じがせず、感触にも柔らかさがあります。自然素材は視覚情報のみならず人間の五感が喜ぶ性質をもっています。漆喰は吸放湿性があり梅雨の時期も室内の空気をカラッとさせてくれます。自然素材には、人間が五感で「心地よい」と感じられる魅力が備わっています。

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「自然素材は価格が高いのでは・・」と敬遠してしまう方もいるかもしれませんが、果たして本当にそうでしょうか? 内装材に関する費用には、「新築費」と「修繕費」があり、費用としてはそのトータル額を考えるべきです。家は一度建てれば30~50年、いやそれ以上の長きにわたり住み継ぐことが可能ですが、内装材によってはその間に何回もの修繕費が必要となるものがあります。例えばクロス(壁紙)はイニシャルコストこそ安い傾向にありますが、おおよそ10年経てば継ぎ目の浮きやはがれが気になり始め、貼り替えを検討しなければなりません。例えば30年間住んだ段階で、早ければ3回の貼り替えを行うことになり、その分の修繕費が必要となります。それに対して、漆喰などの塗り壁は、ある程度の新築費はかかりますが、状態が良ければ30年経っても修繕の必要なく住み続けることができます。30年経った段階で「新築費」と「修繕費」の合計を比較すれば、クロス(壁紙)と塗り壁の費用は同等か、むしろ逆転してクロス(壁紙)のほうが高い場合も出てきます。仮にトータル費用が同等だとして・・・人が五感で「心地よい」と感じられる素材の中で生活できたほうがお得だと、思いませんか・・・?

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(朝霞の家:壁・天井は漆喰、床は無垢フローリング)

 

まとめ

内装材には様々な種類と特徴があります。デザインや好みで選ぶことも重要ですが、耐久性・耐水性・清掃性・吸放湿性・温かさなど、様々な性能や心地よさからも検討することが大切です。そのような点で見ていくと、木・土・紙など、人が長い歴史の中で扱い続けてきた自然素材にも見逃せない長所があります。ぜひ、自分が五感で「心地よい」と感じられる素材探しをしていただきたいと思います。

新井 崇文

新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士

新井 崇文(あらい たかふみ)

自然素材に包まれた、住み心地の良いデザイン住宅づくりを目指す傍ら、共働き家庭で家事と子育てもこなすイクメン設計士。「生活者の視点に立った住宅設計」の専門家。
新井アトリエ一級建築士事務所 ホームページ ブログ
平成26年8月に 「荏田町の家」がTV番組「渡辺篤史の建もの探訪」にて放映

 

 

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