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ライフスタイルや面積に応じた、洗面所・水周りのタイプ分け

監修:新井 崇文(新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士)

心地よく暮らせる家をつくるには、洗面室・水回りが自分のライフスタイルに合っていて、使いやすいことが大切です。本コラムでは、洗面室・水回りのタイプ分け、物干しスペースの配慮、それから温熱環境の大切さについてご紹介します。

洗面室・水回りのタイプ分け

洗面室・水回りには、生活上必要な設備が多々集まっています。「自分が家をつくる際には、何を、どのように配置したらよいだろうか・・」それを考える一助として、洗面室・水回りのタイプ分けをご紹介します。・・・ところで皆さん、海外を旅するとき、ホテルを選ぶ目安として★の数を見ることはありませんでしょうか? 私も以前、ヨーロッパの街を歩きながらホテルの入り口に吊下げられた看板の★の数を見て、「ここは★★(2スター)か・・料金も手ごろそうだから、今夜の宿はここにしよう。」などと品定めした経験があります。

 

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ここでは洗面室・水回りのタイプ分けについて、ホテルの格付けをまねて★の数でネーミングしてみましょう。あくまでタイプ分けですから、★★★★(4スター)が必ずしも良いというわけではなく、★★(2スター)などでも質の高いものはできると考えて下さい。それでは、洗面室・水回りを巡る旅に・・出発!

★★★★(4スター)の洗面室・水回り
あこがれの4スター!これは最大限の設備が揃えられた洗面室・水回りで、「浴室」「脱衣室」「洗面室」「トイレ」の4つの空間で構成されます。

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4つの空間が連続しながらもそれぞれ独立した構成になっているため、「1人が浴室・脱衣室を使っている最中に、もう1人がトイレを使用し、同時にもう1人が洗面室を使う」といった多人数同時使用も可能です。人数の多い家庭における、朝の混雑時にも安心ですね。スペースにゆとりがあればぜひ採用したい、堂々たる洗面室・水回りです。

★★★(3スター)の洗面室・水回り
3スターだってなかなか良い!これは前述した4スターの洗面室・水回りから「脱衣室」が省かれ、「浴室」「洗面室」「トイレ」の3つの空間で構成されたものです。洗面室が脱衣室も兼ねるという考え方です。

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市街地の一般的な住宅では敷地面積や予算上の都合から、水回りにさほどふんだんなスペースを割くわけにはいかず、「脱衣室」までは設けないことがほとんどです。これだって十分に快適・・ですよね。洗濯機は脱衣室がないため洗面室の中に設置します。

★★(2スター)の洗面室・水回り
2スターだって捨てたものではありません!これは、前述した3スターの洗面室・水回りからさらに「トイレ」を省き、「浴室」「洗面室」の2つの空間から構成されたものです。間取り検討は限られたスペースに様々な要素を配置するパズルのようなもので、ある程度の大きさのまとまった洗面室・水回りスペースを確保するのは難しいこともあります。そのような時、この「浴室」「洗面室」の2つの空間による構成であれば、間取りが納まりやすいものです。このタイプでは洗面室の設備についていくつかのバリエーションがあります。

1)洗面器+洗濯機
脱いだ服を同じ室にある洗濯機にすぐ入れることができ便利です。

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2)洗面器+便器
「浴室・洗面室とトイレは近いほうがいい」という方にはおすすめです。この場合、洗濯機は別の場所に設置することになりますが、キッチンに設置すると調理や洗い物と同時並行で洗濯ができて便利という声もあります。その他の設置場所としては家事室、廊下に設けたコーナー、バルコニーなどのケースもあります。

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3)洗面器のみ
最小限の洗面室です。

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★(1スター)の洗面室・水回り
1スターの洗面室・水回りは、「浴室」「洗面室」が合体した1ルームで構成されるものです。

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浴室は洗い場がなくバスタブのみで、その横に洗面器があります。スペースがとれれば便器も併設します。欧米の住宅ではこのようなタイプの洗面室・水回りが1ベッドルームあたり1セットずつ設置されているのが一般的です。つまり、4ベッドルームの家であれば洗面室・水回りも4セット・・・ある面、それもリッチなことですね。

このように、一口に洗面室・水回りと言っても様々なタイプがあります。家族構成や生活習慣を考えながら、「自分の家だったらどうするか・・」と考えてみてはいかがでしょうか。

 

美しく快適に暮らすための物干しスペースとは・・

「雨の日が続くと、室内干しの洗濯物が生活空間に吊るされてうっとうしい・・」そんな経験をされた方はいらっしゃいませんでしょうか・・? かくいう私もまさにそんな経験があります。以前、マンション暮らしだったころ、雨の日に洗濯物を室内干しするときは、家が手狭で適切なスペースがなかったため、リビングやスタディスペースなど生活空間に物干し台を置いたり鴨居からぶら下げたりして干していました。洗濯物が吊るされている室内で過ごすのはあまり居心地のよいものではありませんし、動線上に吊るされている洗濯物をかいくぐりながら室内を移動するのはかなりストレスの溜まることでした。

そんな経験があったため、私は自宅を新築する際には室内干しのスペースとして、広めの洗面室の一面に造りつけのハンガーパイプを設置しました。洗濯機も同じ洗面室に設置してありますから、洗濯後すぐにそこで干すことができます。

 

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また、その後依頼されて設計したお家では、洗面室にさほど広いスペースが確保できなかったため、洗面室の天井に昇降式の物干しを設置しました。

 

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洗面室はある程度高い天井高が確保できましたので、上部で洗濯物を干していても洗面室の利用に支障はありません。このお家では隣接する浴室にも取り外し式の物干しバーを設置しましたので、双方合わせればかなりの量の洗濯物を室内干しすることができます。

室内干しスペースを確保する方法として2つ事例をご紹介しましたが、要は「生活空間に邪魔にならない、目ざわりにならない場所に室内干しスペースを設ける」ことが重要ですので、日常生活で主として使わない予備スペースや階段上部スペースを利用してもよいと思います。あるいは「室内干しといえども、風通しのよい広々した空間で気持ち良く干したい」という方には、サンルームをつくるという徹底した方法もよいでしょう。

また、晴れた日は、やはり外部で洗濯物を干したいものですが、このスペース取りにも配慮が必要です。生活空間であるリビングやダイニングの目の前の庭やバルコニーに洗濯物が干されてしまうと、せっかくの眺望や庭の眺めも台無しというものです。なるべく目立たず、かつ日当たりの良い場所に物干しスペースを確保したいところですが、それにはゾーニング検討時からの考慮が必要です。また、なるべく洗濯機から近い場所かつ同じ階に物干しスペースがあると便利です。

 

まとめ

洗面室・水回りでは、入浴・排泄・そして身にまとう衣類の洗濯・乾燥といった、人の肌身に触れる部分の行為が多く行われます。よって、これらの空間を機能的に、そして美しくつくることは、住まいの快適性に大きく影響する大切なことです。また、上述のポイント以外でもうひとつ大切なことは、温熱環境です。洗面室・脱衣室では入浴するため裸になりますが、冬場ここが寒いと、急激な温度変化により心臓に負担がかかります。実際、家での死亡事故の多くは、脱衣や入浴時の急激な温度変化により起こることが多いのです。これを防ぐために、洗面室・水回りの寒さ対策を行うことが大切です。リビング・ダイニングに近ければ暖気がくるでしょうが、離れている場合は専用の暖房器具を設置して温めてから利用するのがよいでしょう。また、快適性や暖房効率のため、外気に接する壁・天井の断熱対策をしっかりと行うことも重要です。

洗面室・水回りを快適にすることで、心地よい住まいづくりを目指しましょう!

新井 崇文

新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士

新井 崇文(あらい たかふみ)

自然素材に包まれた、住み心地の良いデザイン住宅づくりを目指す傍ら、共働き家庭で家事と子育てもこなすイクメン設計士。「生活者の視点に立った住宅設計」の専門家。
新井アトリエ一級建築士事務所 ホームページ ブログ
平成26年8月に 「荏田町の家」がTV番組「渡辺篤史の建もの探訪」にて放映

 

 

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