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自分のライフスタイルに合ったリビングの発想法~
~もしもドラえもんの仲間たちが将来大人になって家を建てるなら

監修:新井 崇文(新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士)

「どんな家に住みたいですか?」と聞かれた時、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは「リビング」ではないかと思います。リビングは家の中心であり、最も魅力にあふれた場所と言ってもよいでしょう。そんなリビングをどのように考えていけばよいか・・・本コラムでは「リビングとはいったい何か?」「リビングで過ごす魅力とは何か?」の探求から始まり、「自分のライフスタイルに合ったリビングの発想法」について、「もしもドラえもんの仲間たちが将来大人になって家を建てるなら」という例を交えながらご紹介します。

リビングとはいったい何か?

「リビング」とはいったい何なのでしょうか?・・・「家族が団欒する場所」「TVを観たりくつろいだりする場所」など、いろいろなイメージを持たれると思います。もちろん、リビングのあり方は千差万別。ただ、ひとつ言えることは「家族で共用するパブリックスペースである」ということです。つまり「プライベートな個室ではない」ということです。

例えば「パソコンでインターネットを観たり、メールを送受信したりする」という行為。あなたはそれを家の中のどこでやりたいですか?「うちは家族が多くて賑やかすぎるし、子供も小さいので、邪魔されないような場所で・・」と思えば寝室や書斎などの個室でやるのがよいでしょう。逆に、「家族の気配を感じながら、時にはちょっとした会話などしながら・・」と思えばリビングでやるのがよいでしょう。

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(荏田町の家)

ところで、リビングで過ごす魅力とはいったい何なのでしょうか?・・・それを考えるため、いったん家の中から出て街のカフェに話を移します。

 

リビングで過ごす魅力とは何か?

とあるカフェの風景。おしゃべりを楽しむ女性たち、ノートPCで作業に打ち込む男性、軽食をとる若い女性、本を読みふける初老の男性・・・じつに様々な人々が同じ空間にいます。

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私もしばしばカフェを利用します。ちょっと出先で休憩のために立ち寄ることもありますが、長い時間カフェに籠って仕事のアイディアを考えたり、作業したりということもあります。「そういった作業に集中したいなら、一人で部屋に籠った方が静かで効率的なのでは・・?」という声も聞こえそうですが、私の場合、様々な人が出入りし、少々ザワザワしているカフェのような「適度なノイズのある空間」のほうが刺激があって、考え事をしたりアイディアを練ったりする作業などにはむしろ適していることがあるのです。

また、「自分以外の他者がいる空間」というのは適度な緊張感があり、心に張りが出ます。自分一人の空間ではすぐ「ちょっと疲れたから休憩・・」となりがちですが、人がいる空間では心に張りがあり、かなりの時間、作業を持続することができます。以前私が資格試験の勉強に取り組んでいた時期も、家での勉強に行き詰ったときは街のカフェに籠り何時間も問題集に取り組んでいたものでした。家では長続きしない時も、不思議とカフェでは持続できたものです。

カフェの話が長くなりましたが、「自分以外の他者がいる空間」というのは「適度な刺激がある」「心に張りがもたらされる」といった魅力があることに共感いただけたのではないかと思います。そして家の中に話を戻すと・・・リビングという「家族で共用するパブリックスペース」は、まさに街のカフェと同種の魅力をもつ場所、と位置付けることができるのではないでしょうか。

 

自分のライフスタイルに合ったリビングの発想法

さて「家にいるときにやること」を思い浮かべて、そのひとつひとつについて「リビングでやるか、個室でやるか」を考えてみましょう。そして「リビングでやる」という行為をかき集めていくと、自分のライフスタイルに合ったリビングの姿が見えてくるのではないでしょうか。

リビングは家族が長い時間を過ごす場所ですから、様々な行為に対応する「人の居場所」と「家具・モノの置き場所」をセットで設えることがポイントです。リビングの定番家具といえばソファとテレビですが、それ以外にもいろいろな家具・コーナーを加味していくと、自分ならではの素敵なリビングが出来上がります。そんなリビングの発想法のヒントとして、いくつかのアイディアを挙げて見たいと思います。

・・・ところで「ドラえもん」といえば、世代を超えて誰もが知っている日本のマンガ・アニメですよね。ドラえもんの魅力は、ドラえもんの秘密道具のみならず、登場する仲間たちの個性が際立っていることではないでしょうか。「リビングのあり方は住む人の個性に応じて様々であり、自由に発想すべき」という考え方の例として、ここでは「もしもドラえもんの仲間たちが将来大人になって家を建てるなら・・?」というお題で話をしていきたいと思います。

 

1)もしも・・のび太くんが大人になって家を建てるなら

「ねえ、ドラえもん、なんとかしてよう!」というのび太くんの一言から、毎回ドラえもんの秘密道具の出番となります。ドラえもんに頼ってばかりののび太くん・・でも、その温厚で優しい人柄は皆から親しまれています。また、特技は「一瞬で寝られること」。将来大人になったのび太くんもきっと昼寝好きで、休日は穏やかにのんびり過ごしているに違いありません。そんなのび太くんのリビングには、のんびりゴロゴロして過ごせる「縁側スペース」を提案したいと思います。

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南側の縁側スペースは冬の日当りがよく、温室のような暖かさの中で過ごすことができます。夏は十分に張り出した庇で日射を遮ることができるため、風を通せば涼しく過ごすことができます。

 

2)もしも・・出木杉くんが大人になって家を建てるなら

成績優秀で知的好奇心の強い出木杉くん。将来大人になった出木杉くんもきっと日常の様々なシーンで読書や勉強を欠かさない勤勉家であるに違いありません。そんな出木杉くんのリビングの一角にはスタディコーナーを提案したいと思います。出木杉くん自身のみならず、奥さんが家事をしたり、子供が勉強をしたりする時にも使えるスペースです。

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このスタディコーナーは低天井として落ち着きをもたらすとともに、リビングのメイン部分とは「気配は感じられるがあからさまには見えない」程度に造りつけの本棚でやわらかく分節します。

 

3)もしも・・ジャイアンが大人になって家を建てるなら

いつものび太やスネ夫をひきつれて遊んでいるガキ大将のジャイアン。粗暴で迷惑をかけることが多い反面、友情に厚く、面倒見がよい親分肌の一面もあります。また料理が好きで、自ら考案した「ジャイアンシチュー」を皆にふるまう(ただし味は壊滅的)場面もあります。将来大人になったジャイアンも、きっと多くの仲間を集めてホームパーティをするような親分肌の存在であるに違いありません。(料理の腕も、そこそこに改善されていることを望みます・・!) そんなジャイアンには、「土間スペース」と「小上がり畳スペース」との双方にまたがる大テーブルをしつらえた、リビング兼ダイニングを提案したいと思います。

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大テーブルは、人数の多いホームパーティでも皆が一同に会して賑やかに飲み食いするのに重宝します。また日常でも使い勝手がよく、食事のほか団欒、読書、勉強など、様々な生活のシーンに対応することができます。室内には収納をしっかり確保することで、生活で使う小物や本・書類などをテーブルに出しっぱなしにせず、すぐ手軽に収納できるように工夫します。
土間スペースは靴を履いたまま動き回れるため、人の出入りの多い家には便利です。また小上がりの畳スペースは段差部分に腰掛けられるため、人数の多いホームパーティなどの際に腰掛ける場所として重宝します。畳スペースは多目的に使えて、多くの人が集まる際にも便利です。近くには収納を十分に用意します。

 

4)もしも・・スネ夫くんが大人になって家を建てるなら

裕福な家柄のスネ夫くんは、のび太やジャイアンがうらやましがるような品々をたくさん持っています。将来大人になったスネ夫くんもきっと趣味多彩で、豊富なコレクションに囲まれた生活を送ることでしょう。そんなスネ夫くんには、壁一面の飾り棚をしつらえたギャラリーのようなリビングと、その一角には趣味に打ち込めるような「ホビーコーナー」を提案したいと思います。

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「ホビーコーナー」は半地下状に堀り込まれ、趣味の品々を陳列する飾り棚に囲まれた、落ち着きあるスペースで、リビングのメイン部分とは「気配は感じられるがあからさまには見えない」ようにやわらかく分節された空間です。

 

5)もしも・・しずかちゃんが大人になって家を建てるなら

しずかちゃんはお風呂好き。ドラえもんとのび太が「どこでもドア」でしずかちゃんのところへ行くと、しずかちゃんが入浴中のお風呂に出てしまって「キャー!」と追い出されてしまう、そんなシーンはよく出てきましたね。将来大人になったしずかちゃんもきっと大のお風呂好き。そんなしずかちゃんのリビングにはお風呂を・・・というわけにはさすがにいきませんが、リビングから中庭の緑をはさんで浴室がある住まいを提案したいと思います。

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しずかちゃんは昼間から優雅にのんびりバスタイム・・それでもリビングと浴室で家族どうし互いにやんわりと気配を感じられれば一体感があり、長時間入浴していても寂しくないですよね。

 

まとめ

このように、リビングのあり方は住まい手の個性によって多種多様であってよいものだと思います。ぜひ、いったん既成概念を取り払った上で、自分のライフスタイルに合ったリビングの姿を自由に考えてみて下さい。また、感性の合う建築士に相談すれば、自分の趣味趣向を理解してもらった上で、自分では思いつかなかったようなアイディアを出してくれるかもしれませんね。

 

新井 崇文

新井アトリエ一級建築士事務所代表・一級建築士

新井 崇文(あらい たかふみ)

自然素材に包まれた、住み心地の良いデザイン住宅づくりを目指す傍ら、共働き家庭で家事と子育てもこなすイクメン設計士。「生活者の視点に立った住宅設計」の専門家。
新井アトリエ一級建築士事務所 ホームページ ブログ
平成26年8月に 「荏田町の家」がTV番組「渡辺篤史の建もの探訪」にて放映

 

 

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